今回は、多くの学校が取り入れている行事の一つでもある、芸術鑑賞会を行う目的について書いてみたいと思います。

 

オペラ座

 

学校での限界を超えてくれる行事

 

私個人、音楽の教師として教壇に立たせて頂いた経験もあるのですが、そこで否応無く感じてしまうのは、

「授業内でできることには限界がある」

ということ。

音楽の授業は基本的に、歌唱・器楽・鑑賞の3要素から成り立っていますが、歌ったり楽器を演奏したりすることに関しては、それでもまだ授業でカバーできます。

その一方、授業で最も限界を感じるのが“鑑賞”の分野。授業内でできることは、CDを聞かせたりDVDを見せて聴く姿勢を養うという部分が大きく、音楽を体験するということにはどうしても限界があります。

そんな学校現場において、芸術鑑賞会は学校の授業でできる限界を超えてくれる貴重な行事であると感じています。

 

しかし、芸術鑑賞会の実態を見てみると、その多くが「毎年やっているから」といった惰性になってしまっていることも多いようで、行事としての意義が薄らいでいるように思うこともあります。

 

それでは、そもそも『芸術鑑賞会の目的』とはいったい何なのか。

今回は芸術鑑賞会の目的について考察してみたいと思います。

 

芸術鑑賞会を行う3つの目的

 

1.一生に一度しか出会わない芸術と出会う場

音楽子ども

普通に生活しているだけだと一生見ることのなかった芸術に実際に触れる機会を創出できる。

芸術鑑賞会の一番大きな目的はやはりこれだと思います。

 

学校の授業で映像を見せたり、CDを聞かせたりしても、そこで伝わるのはその芸術のほんの一部に過ぎません。

しかし、実際に足を運んで目にすると、その緊張感空気感など芸術は五感全てで感じるものだということがまさに肌で感じられます。

子ども達には、その「空気」を知った上で芸術の面白さを知って欲しい。

例えば、授業でオーケストラの映像を見て、ただその映像だけで、「オーケストラなんてつまらない」と子どもが判断してしまうことは、その子どもがこれからの長い人生を生きる上で、とてももったいないと感じます。

もしそれが今まで興味のなかったジャンルでも、芸術鑑賞会という行事を通して、足を運び、肌で感じる。その結果、芸術の奥深さや凄さがわかる。ということは、実際にあり得ることです。

特に、中学校や高校といった多感な時期だからこそ感じるものも大きく、芸術鑑賞会は、そんな芸術の印象を一度に変えてしまうだけの凄まじいパワーを秘めていると感じます。

 

 

2.進路決定に役立つ

少し意外に思われるかもしれませんが、芸術鑑賞会は子どもが自分の将来を考える上でも大きく役立ちます。

ヴァイオリン奏者

芸術鑑賞会がその芸術との一期一会の出会いであると同時に、 実際の鑑賞会で生徒がもう一つ目にしているもの。それが演奏者 (演者)

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たとえば、オーケストラの場合だと…

音楽に興味のない子どもからすれば、「オーケストラ」など何の魅力も感じない集団かもしれません。

しかし、芸術鑑賞会で実際にその演奏を聴き、そこで少しでも心が動かされると、

「ここで弾いている人は一体どういう人なのだろう」

と演奏者にも自然に興味がわくようになります。

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どんなジャンルでもそうですが、何かひとつの道を極めた人というのは、人間的に非常に魅力的ですし、その人から学ぶことも多いものです。

芸術鑑賞会を通して子どもが出会う人間の多くが、

「何かの道に魅了され、その芸を極めた人」

です。

そういったある分野でのプロフェッショナルと出会うことは、子どもたちが進路を決めていく上で確実に役立つ体験になると感じます。

 

3.異なる価値観を認める姿勢を身につける

最後に、芸術鑑賞会が担っている目的の中でも一番「教育的」なものがこれです。

ある一つの芸術は、

音楽なら音
演劇なら台詞
バレエなら踊り…

というように、何かひとつの点に特化した表現の世界であると言えます。

バレエ

人それぞれに考え方が違うように、芸術にもそれぞれ“核”となる表現方法が存在しており、芸術同士は互いにその“核”を尊重し合うことで昇華していく。という面があります。

これは、人の場合にも同じことが言えて、異なる考えを尊重しあう中で、自分自身の考え方も広く強く成長していくということが自分の考えを育てる上では大きな力になります。

そしてその姿勢をもつことは、自分とは異なる考え方を受け入れることにもつながっていきます。

芸術鑑賞会を通して、何か一つの世界観に特化した芸術に触れ、その良さを理解しようと努める姿勢は、

他者を尊重する姿勢を身につけて、異なる価値観を認める

ことへ自然とつながっていきます。

 

まとめ

今回の記事をまとめると、芸術鑑賞会を行う3つの目的は、

1. 一生に一度しか出会わない芸術と出会うことで、子どもの心を育てる。

2. 演奏者の生き様に触れることで、自分の進路決定に役立つ。

3. ある点に特化した芸術に触れることで、異なる価値観を認める姿勢を身につける。

ということになります。

 

実際に多くの学校で行われている「芸術鑑賞会」ですが、「そもそもなぜやっているのか?」という点に関しては意外と曖昧になっているところも大きいのではないでしょうか?

しかし、「芸術鑑賞会」には今回お伝えしたような目的のように、多くの貴重な体験を子どもに伝えることができる素晴らしい意義があると感じます。

「芸術鑑賞会」が持っている力を再認識することで、この行事の価値を最大限まで高めていくことができるのではないでしょうか。

 

 

最後に、これだけの価値を持つ芸術鑑賞会ですが、実際の芸術鑑賞会を本当の意味で有意義なものにするためには、ほかの多くの行事がそうであるように、それに向けての「準備」も必要だと感じています。

 

ただ、鑑賞プログラムを決めて、日程を決めて…鑑賞、おしまい。

それだけではあまりにも味気なく、芸術鑑賞会の本来持っている価値を生かし切れません。

では、今回お伝えした「芸術鑑賞会のもつ3つの目的」を、しっかりと子どもに伝えていくためにはどうすれば良いのか?

 

そのための一つの方法として鑑賞会の前に行う「事前学習の重要性」があると思います。

次の記事では、「芸術鑑賞会をより充実したものにする事前学習」について書きましたのでこちらも合わせてお読みください。

(参考記事)→「芸術鑑賞会|事前学習のススメ〜芸術鑑賞会の充実のために~」

 

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芸術鑑賞会

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