吹奏楽部が夏の吹奏楽コンクールと同じように取り組む『コンクール』と言えば
アンサンブルコンテスト(通称アンコン)
です。
吹奏楽コンクールに比べると学校によって取り組んでいないところもありその取り組みにはバラツキが見られますが、しっかりと取り組むことで得られるものが多いことも事実。
今回はアンサンブルの課題や問題点を考えた上で、魅力や取り組むメリットについてまとめてみたいと思います。
目次
アンコンに出場する上での課題
魅力やメリットについて考える前に、ますは部活動として取り組む場合のアンコンの問題点について考えてみます。
生徒全員が出れる訳ではない
アンコンは吹奏楽コンクールと違い出れる団体に限りがあります。原則的に、
1つの学校につき2団体まで
となっておりアンコンの規定による最大の人数が8名ですから最大でも1校あたり16名の部員しか出ることができないということになります。
そのため、「全員参加」の形をつくることが難しくなってしまい、アンサンブルと並行して結局合奏をやらなければならないといった「手間や負担の増加」がアンコン参加における問題の一つとなっています。
編成を組む上での難しさ
また、
・上手く編成を組むのが難しい
・生徒全員が出れるわけではない
という問題をクリアしようとした時、
部員全員でいくつかのアンサンブルグループをつくり
「校内予選」を行なって選抜する。
という形を取る学校さんもありますがそこで問題になるのが
「1人1つ」の編成を組む難しさ
です。練習効率などを考えると2つ以上のアンサンブルに1人の部員が参加することは現実的ではないので
「1人が1つのアンサンブルに参加する」というのが基本になるのですが、そうなると次は部員全員がもれなくきれいに組む編成を見つけることが難しくなってしまうのです。
選曲のしやすさやより良い賞を目指しやすくするための「実力重視」なのか、
コミュニケーションが取りやすくなる「学年重視」なのか、
といった「何を目的にするか」という点も編成を考える際の難しさのひとつです。
楽器の問題
クラシックのアンサンブル編成の中ではポピュラーな方に分類されるにもかかわらず、中高生が取り組みづらい編成の代表格に「木管5重奏」が挙げられます。
Ensemble Leventでも木管5重奏で演奏する機会は多いのですが、アンコンではなかなか取り上げられません。
その1番の理由は
オーボエとファゴットがいない
ことです。
この例はやや極端ではありますが、アンサンブルでやりたい曲があった場合でも、そもそもその曲に必要な楽器がその部にはない。
という問題も少なくありません。
時期的な問題
吹奏楽コンクールが多くの学校にとって年間行事のメインとして据えられることが多いため、吹奏楽コンクールを中心に年間スケジュールを組んでいる学校も少なくありません。
それはおそらくコンクールを主催している吹奏楽連盟側も同じで、吹奏楽コンクールを比較的自由度の高い夏休みに行っているため、
アンコンは予選や地区大会が11月から12月、(東京都などだと年明けすぐの1月初旬)にかけて行うということになり、
入試や新旧世代交代といった、どうしてもタイミング的に難しい時期の開催となってしまっていることもアンコンが抱えている問題のひとつと言えます。
アンサンブルの魅力
ここまではアンコンの抱えるさまざまな問題に関して考えてみました。
ここからは、これだけの問題があってもなおアンサンブルに取り組んだ方がいいと思える『アンサンブルの魅力』についてです。
乗り越えないといけない課題も多いアンコンですが、実際にはそれ以上の「魅力」があることも間違いなくありません。
一つの例を参考に「アンサンブルの魅力」についてお話しさせていただきます。
ある指導校での出来事
Ensemble Leventでは吹奏楽指導活動「ルヴァン・クラブ」を行なっています。
その中で、当団体で関わらせていただいているとある指導校でのことでした。
その学校には「合奏」と「パートレッスン」で関わらせていただいているのですが、コンクールが終わってからはアンサンブルシフトにして練習に取り組んでいました。
そして、その活動がひと段落し、久しぶりに合奏を聴かせていただいた時のことです。
コンクール直後に比べて格段に音がよく鳴っていたのです。
月日が経っているので当然といえば当然ですが、それにしても著しい変化に驚きました。
・楽器がしっかりと鳴っていて、
・狭い部屋で聴いても決してうるさいとは感じない
・ハリのある音
はすごく気持ちのいいサウンドでした。
「やらないとどうしようもない状況」が生徒を成長させる
音を出すことに対する責任感が生まれた
合奏だと常にある程度の人数で音を出しているため
「自分がどんな音を出しているか」
がどうしてもわかりにくくなってしまいます。
それがアンサンブルになると多くても8人。
しかも自分のパートは自分しか吹いていないため必然的に音を出すことに対しての「責任」が増してきます。
その結果、音が大きくなる、自信を持って吹くことができるといった楽器を吹く上でのわかりやすいメリットを得ることができます。
主体性が増す
アンサンブルには合奏と違って指揮をしてくれる先生がいません。
そうなると練習では、生徒自身が主導権を持って進めるしかない状況が生まれます。これは
英語が喋れない人でも外国にいて数ヶ月するとだいぶ喋れるようになる
のと似ていて、どうしようもない状況になることでそれぞれが主体的に音楽に関わるようになっていくのだと思います。
過去には、一見リーダーがいないように見えたグループでもアンサンブルをしたことである生徒が成長し「リーダー」が生まれた。
ということもありました。
「やらないとどうしようもない状況」は時に生徒のポテンシャルを最大限に引き出してくれます。
まとめ〜アンサンブルを経て「意思」を感じる音に〜
こうして一人一人が音に対して責任を持ち、主体性を持って音楽に関わることができるようになった結果、
久しぶりに合奏で出した音は「意思を感じられる音」になっていました。
個人的にはこれがアンサンブルをすることで得られる大きなメリットだと思います。
音に意思が生まれることで「表現の幅」が飛躍的に広がることになります。
『こう吹きたい』と思って出す音がその『思いを反映した音』になっている。
音を作る楽器、“作音楽器”とも言われる管楽器にとっては非常に大切なことだと思います。
音に意思が出てくることで合奏はグッと深みを増しますし、何より演奏している本人達が楽しくなっていきます。
取り組むためには課題もあるアンサンブルですが、一人一人にスポットが当たるアンサンブルだからこそぜひ多くの方に取り組んでいただければと思っています。そうすることで、
・自分が「なぜ」音を出しているのか
・「何を思って」音を出しているのか
についていつも以上に考えることができ、「意思」のある音を出すことができる。
これがアンサンブルに取り組むことによって得られる大きな魅力の一つだと思います。