吹奏楽の指導に携わっていると、部員数が30人前後の学校さんとよく出会います。

この30人という人数は、吹奏楽コンクールだと「BⅡ部門(東京都の場合)」に分類され、上位大会が用意されている部門に該当する人数です。

少子化の中で子どもの数が減っていく中、この小編成(30人編成)は今後ますます盛んになってくると思われます。

今回は、そんな30人編成の吹奏楽小編成について、日頃の指導の経験も踏まえながら、楽器や人数について検討してみたいと思います。

標準的な楽器とその役割

30人の編成を考える前に、平均的にどの学校にでもあるであろう標準的な楽器(パート)と役割についてまとめてみます。

パート 主な役割
フルート メロディー
クラリネット メロディー、ハーモニー
バス・クラリネット バス
アルトサクソフォーン メロディー、
テナーサクソフォーン ハーモニー、対旋律
バリトンサクソフォーン バス
トランペット メロディー
ホルン ハーモニー、対旋律
トロンボーン ハーモニー
ユーフォニアム メロディー、対旋律、バス
チューバ バス
打楽器 バス、リズム

編成を考える上では、最終的なバランスを考えて人数を割り振ることになります。

そのため表にある「主な役割」を参考にしながら、理想的な人数バランスを考えていくとうまく行きやすくなります。

学校の実情に合わせた3つの編成

それでは、ここからは学校にある楽器やない楽器なども考慮した上で、「標準編成」「応用編成」さらには、「理想編成」を考えてみたいと思います。

標準編成

まずは、おそらくどの学校にも基本的に準備されているであろう楽器で編成する場合です。
先ほどの表に人数を加えて、30人の「標準編成」を考えてみます。

パート 主な役割 人数
フルート メロディー 2
クラリネット メロディー、ハーモニー 4~6
バス・クラリネット バス 1
アルトサクソフォーン メロディー、 2
テナーサクソフォーン ハーモニー、対旋律 1
バリトンサクソフォーン バス 1
トランペット メロディー 3
ホルン ハーモニー、対旋律 2~4
トロンボーン ハーモニー 2~3
ユーフォニアム メロディー、対旋律、バス 1
チューバ バス 1~2
打楽器 バス、リズム 3~4
  合計(最小~最大) 23~30

◯~◯と幅を持たせているパートは、演奏する曲や学校の人数バランスに応じて変更しやすい部分です。

参考までに、フォスターミュージックで出版されている福島弘和作曲の「夢への冒険」(2018年販売セールス1位)の曲の編成をみてみると、

となっており、先ほどの標準編成で演奏できることがわかります。

応用編成

続いてはオーボエ、ファゴット、コントラバスの3つの楽器を加えた「応用編成」について考えてみます。

この3つの楽器、学校によってあったりなかったりしますが、もしある場合にはぜひ編成に加えることをオススメします。
その理由は、この3つの楽器は大編成の学校の場合、ある程度人数を確保しなければいけない「音の小さな楽器」ですが、人数の少ない小編成の場合、1本でもしっかりと聞こえ、音色に深みを加えてくれるからです。

ちなみにこれから導入を考える場合の優先順としては、

1.オーボエ

2.コントラバス

3.ファゴット

の順番かなと思います。ただ、この3つの楽器同士の相性が良いということもあるので、できれば同時に2種類以上加えると良いかと思います。

それでは、応用編成を考えてみます。

パート 主な役割 人数
フルート メロディー 2
オーボエ メロディー(ソロ) 1
クラリネット メロディー、ハーモニー 4~5
バス・クラリネット バス 1
ファゴット バス、対旋律 1
アルトサクソフォーン メロディー、 2
テナーサクソフォーン ハーモニー、対旋律 1
バリトンサクソフォーン バス 1
トランペット メロディー 3
ホルン ハーモニー、対旋律 2~3
トロンボーン ハーモニー 2~3
ユーフォニアム メロディー、対旋律、バス 1
チューバ バス 1
コントラバス バス 1
打楽器 バス、リズム 3~4
  合計(最小~最大) 26~30

3つのパートに1人ずつ入れることを考えて、

クラリネット→オーボエ

ホルン→ファゴット

チューバ→コントラバス

という風に人数を調整してみました。

理想編成

最後に、以上のことを踏まえた上で30人編成の「理想編成」を作ってみたいと思います。

パート 主な役割 人数
フルート メロディー 2
オーボエ メロディー(ソロ) 1
クラリネット メロディー、ハーモニー 5
バス・クラリネット バス 1
アルトサクソフォーン メロディー、 2
テナーサクソフォーン ハーモニー、対旋律 1
バリトンサクソフォーン バス 1
トランペット メロディー 3
ホルン ハーモニー、対旋律 4
トロンボーン ハーモニー 3
ユーフォニアム メロディー、対旋律、バス 1
チューバ バス 1
コントラバス バス 1
打楽器 バス、リズム 4
  合計(最小~最大) 30

ファゴットのみ外した編成で考えてみました。上記はあくまで一例ですが、それぞれの楽器の役割や音量のバランスを考慮しても理想的ではないかなと思います。

上記の例を元に、

バスパートが欲しい場合は、ホルンを3にして、チューバを2に

オーボエがいないので、オーボエを0にしてトランペットを4に

といった調整を行うことで、各バンドにあった編成になると同時に「個性」が出てきます。

まとめ

今回はあくまでも「理想形」として考えてみましたが、実際に編成を行う際には「学年の人数バランス」や「各パートの技術継承ができるか」といった問題も考慮していかないといけないため、難しいことも多いかと思います。

どの学年が引退しても極端に偏った編成になってしまわないよう、先ほどの表の中で2人以上のパートは必ず学年をバラけさせておくこともポイントです。

今回はコンクールのB部門(30人部門)で考えてみましたが、コンクールだけが吹奏楽部の活動ではないので、年間通して様々な曲を演奏しやすい編成を年度の最初に整えておくことが、とても重要かと思います。

たくさんの学校の演奏を聞いていると、「編成にも学校の個性が現れるなあ」と思います。
上記の表が、それぞれの学校が学校ごとの「個性」をしっかりと出せる編成をする上で少しでも役に立てば幸いです。

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(最新情報)

2020年2月27日(木)。
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