吹奏楽部の指導に携わっていると、吹奏楽コンクールで演奏する自由曲の選び方についてご相談を受けることがあります。

確かに、一夏をかけて取り組み曲なので、音楽的にも技術的にもその年のそのバンドに合ったものを選ぶことが重要だと思います。

特に、吹奏楽経験が薄くお悩みの先生ほど自由曲選びは悩みの種かとも思いますので、今回は、吹奏楽コンクールで演奏する自由曲の選び方についてレポートにまとめていきます。

吹奏楽コンクールの自由曲の規定

吹奏楽コンクールには様々な部門や規定があるので、コンクール曲を決める際には一度出る部門を確認しておきましょう。それぞれの部門に合った曲があります。

部門分け

A部門:大編成(全国大会に続く部門)
B部門:中編成(上位大会がある部門)
C部門:小編成(上位大会のない部門)

 

演奏時間

例:東京都の場合
A組:12分(課題曲を含む)
BⅠ組:7分
BⅡ組:7分→上位大会あり
C組:7分

 

編成、人数

A組:中学校50人 高校55人
BⅠ組:35名
BⅡ組:30名
C組:20名

ここでは簡単にまとめましたが、もう少し具体的に知りたい方は、こちらのレポートも参考にしてください。(参考記事→吹奏楽コンクールの部門の種類と出場部門の選び方

 

決める際に注目するべきポイント

コンクール曲を決めるには様々な要素を考慮する必要が出てきます。続いて、そういったコンクール曲を決める際に注目すると良い要素についてまとめていきます。

 

コンクールの目的(意義)をどこに据えるか

まずは、コンクールに出る目的(意義)を明確にしましょう。吹奏楽コンクールは確かに大きな行事ですが、それが吹奏楽部の全てではありません。

しかし、出場する以上はそれなりの目的を持って取り組んだ方がその分得るものも大きくなります。

吹奏楽部顧問の先生の方針ももちろんあると思いますし、生徒のコンクールに対する意欲も考慮して、一夏を懸けることのできる目的を明確にしてください。

 

アレンジ作品とオリジナル作品

吹奏楽の曲には大きく分けて2種類のタイプがあります。

アレンジ作品

オーケストラの作品を吹奏楽に編曲した作品のことで、原曲がベルリオーズラフマニノフといった有名作曲家による作品のため、音楽的に充実している曲が多いのが特徴です。

その一方で、弦楽器によるパートを管楽器に置き換えるため必然的に難易度は高く、また、チェレスタやハープなどの大型の特殊楽器を必要とすることも多くなります。

(曲例)
・ローマの松 /レスピーギ 作曲
・パガニーニの主題による変奏曲 /ラフマニノフ 作曲

 

オリジナル作品

最初から吹奏楽の編成のために書かれた曲のことで、古いものであればホルストA.リードといった海外の作曲家の作品もあります。一方、近年では、日本における吹奏楽需要の高まりを受けて天野正道樽屋雅徳といった邦人作曲家の作品も多くあります。

特徴は、日本の吹奏楽需要に応えた多種多様な作品が多いということが言えます。編成も小編成から大編成まで、難易度も幅が広い割には演奏効果の高い曲が数多くあります。

しかし、一方で、急激な作品の増加に伴って中身があまりない曲があることも事実のため、選曲する際には注意が必要です。

(曲例)
・フェスティバル・ヴァリエーション /C.T.スミス 作曲
・マードックからの最後の手紙 /樽屋雅徳 作曲

 

先生の得意分野

続いては、実際に指揮をする先生自身の指導方針です。とは言っても、このレポートを読んでいらっしゃる先生の中には、吹奏楽指導にいまひとつ自信を持つことができない先生もいるかと思いますので、その辺りも考慮してお伝えしたいと思います。

得意分野は、

・技術的な指導が得意
・音楽的な指導が得意

の2つに分けることができます。

 

技術的な指導が得意な先生

技術指導が得意な先生というのは、これまでに吹奏楽の経験があったりある程度音楽(合奏)を体系だてて指導することが得意な先生のことです。

こういった先生の場合は、生徒の楽器の技術を伸ばすスキルもお持ちかと思いますので、技術的に難易度の高い曲を選ばれると良いかもしれません。

 

音楽的な指導が得意な先生

一方、音楽的な指導が得意な先生というのは、文字通り“歌心がある”先生のことです。技術指導は苦手でも、音楽に対する熱意がある先生です。

また、こちらの先生の場合は、仮に音楽の経験者でなくても生徒のことをしっかりと考えることのできる、人望のある先生であれば、音楽的な指導を重視することで曲が出来上がってくるでしょう。

こちらのタイプの先生の場合は、オペレッタやバレエといったようにメロディーのしっかりした曲を選ばれると良いかと思います。

 

生徒の音楽的な志向

先生にもタイプがあるように、生徒にも2種類のタイプが考えられます。これは、生徒の個人差というよりは、学校の校風のようなものも強く影響しており、生徒がどちらに魅力を感じるかということになるかと思います。

技術志向の生徒

音楽にも興味はあるけど、楽器の技術向上に貪欲に努力できるタイプの生徒です。できないことを地道にコツコツ努力して乗り越えると言う意味では、どちらかと言うと進学校に多いタイプとも言えます。

こういう生徒が多い場合には、技術的に間に合うか間に合わないかギリギリくらいの難易度の高い曲を選ぶと良いかと思います。

 

音楽志向の生徒

とにかく歌うことが好きで、感情表現も豊か、部の雰囲気もとても明るい部活に多いタイプです。良い意味で子どもらしい無邪気さを持っているような、自由な校風の学校に多いタイプとも言えるかもしれません。

こういう生徒が多い場合には、音楽的にとにかく歌いやすいもの、またはストーリー性のある曲を選ぶことで、ドラマティックな演奏が期待できます。

 

邦人作曲家と海外作曲家

オリジナル作品のところでも少し触れましたが、日本の作曲家と海外の作曲家の違いもあります。それぞれの特徴を簡単にまとめると、次のような感じになります。

邦人作曲家 海外作曲家
時代 新しいものが多い 古典作曲家から近代まで
探しやすさ 探しやすい 探しづらい
演奏効果 無難に良いものが多い 当たり外れがある
樽屋雅徳
福島弘和
天野正道
A.リード
J.スウェアリンジェン
J.ヴァンデルロースト

作曲家にはそれぞれの響きがあります。そのため、ある程度いろいろな作曲家の作品を聴いてみて、気に入った作曲家が見つかったら、その作曲家の曲を集中的に聴いていくと、気に入った作品に出会えるかもしれません。

 

その年のバンドのレベル

その年のバンドのレベルにあった曲を選びましょう。ただし、あまりにも簡単すぎる曲だとコンクール前にやることがなくなってしまうという事態に陥ってしまうため、コンクールまでにギリギリ間に合うか間に合わないかくらいの難易度の曲を選ぶことをお勧めします。

 

その年のパートごとのレベル

バンドのレベルと同じように、パートごとのレベルにも年ごとの差があります。

木管楽器が上手な年
金管楽器が上手な年
トランペットが上手な年
サックスが上手な年…

というように、ソロや目立つパートがその年の上手なパートに集まるようにすると良いと思います。逆に、苦手な子に目立つパートがいってしまうと、その子が苦労して辛くなってしまうこともあるので、パートごとのレベルと、曲の難易度のバランスには注意しましょう。

 

打楽器の人数

意外と見落としがちなのが、「打楽器の人数」です。

吹奏楽を指導していてもどうしても後回しにされがちな打楽器パート。しかし、その演奏効果は大きく、奏者の人数がいるのであれば、しっかりと使うことをお勧めします。

具体的に起こりやすいミスとしては、

せっかく打楽器の人数が揃っているのに打楽器が2人しかいないような曲を選んでしまった…
打楽器の人数が足りなかったため、パートを削らなければいけなくなってしまった…

といったことがあげられます。

もし曲を探していて、気に入った曲に出会った場合には、パート編成を確認して打楽器が何人必要かを確認してみてください。よくわからない場合には、打楽器パートの生徒に聞いてみると良いと思います。

 

特殊楽器の有無

吹奏楽コンクールには管楽器・打楽器以外にも認められている特殊楽器があります。具体的には、コントラバス・ピアノ・チェレスタ・ハープといった大型の楽器のほか、近年よく見かける和太鼓といった打楽器の特殊楽器があります。

もし、気に入った曲に特殊楽器があった場合には、借用料金なども含めて楽器を揃えることができるかを考慮するようにしましょう。

 

過去に演奏されている曲と傾向

これはコンクールならではの問題です。吹奏楽には「春の猟犬」「吹奏楽のための第一組曲」といったいわゆる“名曲”も数多く存在しています。

これらは当然どれも良い曲なのですが、それ故に過去の吹奏楽コンクールでも演奏されており、そういう意味では「やり尽くされた感」があります。

また、このような「やり尽くされた感」のある作品は審査員の先生も当然「よく知っている曲」ということになるので、過去の良い演奏と比べられやすくなってしまい、どうしても評価されづらくなります。

なので、もし気に入った曲に出会った場合には、

それがいつ作曲されたのか?
過去に吹奏楽コンクールでどのくらい取り上げられたか?

といったことを調べてみてください。その場合、下記のようなサイトはとても便利かと思います。

吹奏楽コンクールデータベース

また、コンクールという性質上、評価されやすい曲と、いい曲だけど評価されづらい曲というものもありますので、過去の傾向を調べることはそういった意味でも大切になります。

 

最後に〜一番大切にして欲しいポイント〜

ここまで様々なポイントを紹介してきましたが、最後に、一番大切にしてほしいポイントを一つお伝えしておこうと思います。それは、

心と耳に残る曲を選ぶ。

ということです。

吹奏楽コンクールは、日本の吹奏楽業界を支える素晴らしい行事ですが、中には、コンクール至上主義=勝つためにはなんでもやるといった学校もあります。

そういう学校では、「確かに金賞を取ったけど、何をやったか忘れた」という生徒さんの声を聞くことも少なくありません。せっかく一夏懸けて臨んだのにその曲を覚えていない、というのは非常に悲しいことのように感じます。

なので、コンクール曲を選ぶ時の最後の決め手は「生徒にとってこの曲が心と耳に残る曲かどうか」であって欲しいと思います。

 

まとめ

今回は、「吹奏楽コンクールの自由曲の選び方」に焦点をあてたレポートでしたが、いかがでしたでしょうか?

中学1年生から高校3年生まで出続ければ計6曲の吹奏楽コンクールを演奏することになります。生徒は、その曲の一つ一つに何百時間もの時間を費やして練習していくことになる訳で、どの曲も生徒一人一人にとっていい曲、いい音楽であって欲しいと思います。

そういった意味で、今回のレポートが自由曲選びにお悩みの方の参考になれば、幸いです。お読みくださりありがとうございました。

 

 

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