2025年度、私たちアンサンブル・ルヴァンは文化庁学校巡回中国地方にお伺いさせていただいております。

今年度は6月・10月・12月の3クールで伺っており、今年も全17校(追加実施校含む)もの学校にお伺いすることとなりました。

一校一校心を込めて演奏させていただいておりますが、本レポートでは上半期のクールについてご報告しつつ当団体の巡回公演事業の内容についても少し触れてみたいと思います。

学校一覧

6月クールで本公演を実施させていただいた学校は下記の通りです。

 

岡山県:3校

美咲町|小学校
岡山市内|特別支援学校
鏡野町|小学校

広島県:7校

府中市|小学校
三次市|中学校
広島市|小学校
広島市|小学校
広島市|小学校
広島市|小学校
広島市|小学校

鳥取県:1校

北栄町|中学校

山口県:1校

下関市|小学校

合計、12校の中国地方の学校にお伺いさせていただきました。

本事業において本公演の前に行うワークショップ(詳しくは後述します)を含めると1ヵ月近く滞在するメンバーもいる長期クールとなりましたが、改めてたくさんの学校にお伺いさせていただけたこと、ありがたく感じております。

巡回公演事業の内容について

ここで少し本事業の内容について触れておきたいと思います。

【文化庁公式サイト(事業紹介PV)】https://www.kodomogeijutsu.go.jp/movie/index.html

本事業は、文化庁の予算で芸術団体が各学校に赴きワークショップ→本公演の2段階で芸術の普及を行っているものとなります。

 

ワークショップ

ワークショップの意義

本事業(文化庁学校巡回公演事業)では、本公演の実施前にワークショップ(WS)を行うことが定められています。

ワークショップ…5名程度の少人数の奏者が、事前に学校に出向いて本公演に向けた演奏や体験授業を行うという、いわゆる“アウトリーチ”的な要素の強い取り組み。

当団体では、本事業に採択される以前から元々「鑑賞会前の事前の動線づくり」を意識しており、過去鑑賞会を実施した学校にも事前学習の資料を送るなどをして『より本公演を楽しんでいただく仕組みづくり』を行なっていました。

そういった点からも、当事業のWSは非常に重要かつありがたい仕組みで、私たちが文化庁巡回公演事業に関わらせていただきたいと思った一つの理由でもあります。

 

鑑賞会を行う難しさと責任

私たちが、学校での鑑賞会を行う際に気を付けていることに

“そこには音楽を聴きたくなかった子もいるかもしれない”

という意識があります。

児童生徒の中には、音楽に慣れ親しんだことのない子どももたくさんいて、場合によってはその子にとって私たちの鑑賞会が、“最初で最後の生の音楽との出会い”になる可能性だってあります。

この「最初に出会う責任」を鑑賞会実施団体としては非常に重く考えていて、つい最近も(大人の方ですが)「人生で初めて見たオペラがニューヨークで観た『サロメ』で、それ以降クラシックは難しいと思うようになった…」というお話を聞きました。

もちろんこの『サロメ』が素晴らしい公演だった可能性は極めて高いと思いますが、このケースは聴く側の下地がない上で受け取ってしまったことで結果的に「わからないもの」となってしまった(聴き手側にとっても発信した側にとっても)という不幸なケースだと思います。

「芸術」に最初に出会う時、「何に、どう出会うか」はことのほか重要で、場合によってはその子の一生にさえ影響します。

その「最初」を担う可能性の高い学校での鑑賞事業においては、「一人もおいていかないこと」を心がけることが実施団体としては忘れてはいけない点だと考えています。

 

改めて考えるワークショップの意義

芸術鑑賞会を1回やるだけ(その日一日だけの出会い)では、つくれない関係性をワークショップではつくることができます。

実際に子どもたちと話したり近い距離で演奏を聞いてもらったり。

こういった奏者との交流は、もちろん鑑賞会当日も意識していることではありますが、基本的には「公演形式」となる本公演と違って、ワークショップではアウトリーチ形式だからこそできる子どもたちとの“対話”があります。

実際に、私たちのワークショップでも

・みんなで金管楽器のマウスピースを吹いてみる

・音の出ている状態のホースに触れる

といった「音の(出る)仕組み」を感じてもらう体験のほかに、

・アンサンブルを好きな楽器の近くで鑑賞してもらう

・体育館に寝転がって音楽を聞いてみる

といった本公演でのコンサートではなかなか難しいような体験を意識的に取り入れることでより『非日常』な記憶として子どもたちに残ることをねらっています。

こういったワークショップは特性上少人数に向けて実施する方が効果的であるため、各学校へもなるべく少人数での実施をお願いしています。

もちろん「事前に子どもたちと奏者が出会っておく」という点だけで見れば、全校生徒に向けてワークショップを行う方が良い点もあるのかもしれませんが、あえて少人数に絞って実施し、その子たちに深く刺さる時間を提供し、少人数の『ファン』をつくっておくことこそがワークショップの一番の意義で、そこで「楽しい!」と感じてくれた子どもたちが、友達や兄弟姉妹に「何か楽しいことをしてくれる団体だよ」ということを伝えてくれることで本公演に向けて機運の醸成になればと考えています。

 

 

本公演

私たちの90分のプログラム「変幻自在!?管打楽器アンサンブルの七変化〜文化の交わる音楽会〜」では、、様々な編成でのアンサンブルをお届けしていきます。手前味噌ではありますが、90分のプログラムでこれだけたくさんの編成を届ける音楽団体はおそらく他になく、

  1. 和太鼓独奏
  2. 木管5重奏
  3. 金管5重奏
  4. サクソフォーン独奏
  5. トランペット2重奏
  6. 木管5重奏+和太鼓
  7. 打楽器2重奏(マリンバ)
  8. 管打楽器13重奏

と1回のコンサートでこれだけの編成を組み込んでいます。

普段、音楽を聴く習慣が少ない子たちからすると(それがどれだけ歴史的に確立された素晴らしい編成である)大編成のオーケストラであったとしてもやはり「90分座って聞き続ける」ことはなかなか難しく(ましてやそれがかたい体育館の床だとなおさらですが)、“何をどう聞いたらいいかわからない…”となってしまうことは容易に想像できます。(

その点、まず「見た目」が変わるということは飽きずに聞いてもらうことへの一つの試みで、実際に私たちの演目を最初学校にお伝えした際に

「低学年は90分聞けないかもしれないです…」

と言ったご心配の声も先生方からは上がるのですが、実際に蓋を開けてみると

「あっという間でした。」

「低学年も最後まで聞いていて驚きました。」

と言った嬉しいお声をいただきます。

演目的には(おそらく私たちの扱う曲目は、普段生活ではなかなか耳にしないような曲ばかりで)子どもたちに馴染みがあるとは到底言えないプログラムですが、「どう聞かせるか」を少し工夫しておくことで、子どもたちには案外素直に浸透していくことを感じています。

攻めた演目への考察

今年度の当団体のプログラムには一曲「攻めた演目」があります。

それが、2024年に中村匡寿氏に委嘱させていただいた演目『獅子踏青(ししとうせい)』。

この曲は木管5重奏と和太鼓のために書き下ろしていただいた作品で、西洋楽器×和楽器という編成は当団体の独自性にもつながる演目となっており、その独特の響きは「現代音楽的」と言えば、そう聞こえます。

そういった大人が感じる音楽的な“難しさ”から、この曲を小中学生を対象とする文化庁巡回公演事業に組み込むことは私たちとしてもある種の挑戦だったのですが、いざ演奏してみると子どもには案外「新鮮な響き」として聴こえるようで、当初の疑念とは裏腹に好評をいただく演目となっています。

 

 

思い出

今回訪れている中国地方はメンバーに広島出身者が多い当団体にとって、ゆかりの地となります。

そこに広がる景色や、中国山地の風。川の多い地形や瀬戸内海の海、そして、広島や岡山の方言。

この記事を書いている代表・兼清自身もそれら一つ一つが懐かしく、自分が生まれ育った土地にこうして戻って来れたことを本当にありがたく幸せに感じています。

さらに、今回伺った広島市内の小学校に昔私が所属していた大町小学校マーチングバンドの先輩が現役の先生として赴任されておられ奇跡の再会をはたすなど、嬉しい偶然にも恵まれ、改めて「戻ってきてよかった」と感じることのできる巡回公演事業となりました。

後期も10月・12月と続いていきますが、心を込めてまいりたいと思います。

 

<<公演のお知らせ>>

→12月3日(水)に上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)にて団体初となる地方での主催公演を開催することが決定しました!

詳しくは近日公開予定となります特設サイトをご覧ください。

 

 

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