2019年11月3日(日)。表参道にある能楽堂、銕仙会能楽研修所にて““ONE”CONCERT~FUEIRO~”を開催させていただきました。

この公演は港区文化芸術サポート事業助成公演として行った一連の公演のメイン公演にあたり、“サロンコンサート”と“公開リハーサル”に続く3つ目の事業でした。

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アンサンブル・ルヴァンが主催でお送りする“ONE”CONCERTシリーズでは、コンサート毎にテーマを設けて開催しているのですが、今回は1月に行った「KANSYA(感謝)」、6月に行った「KYOWA(協和)」に続き「FUEIRO(笛色)」とテーマを題した木管5重奏と尺八によるコンサートをお送りいたしました。この記事では本公演の様子をまとめていきます。

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コンセプト

本公演のコンセプトは「西洋と東洋の笛を聴き比べる」。

東京オリンピック2020を来年に控えその中心地ともなる東京都港区での助成公演ということもあり、“異文化交流”を視野に入れた公演でした。編成はフルートやクラリネットといった西洋の笛による木管5重奏に日本の笛である尺八を加えた6重奏。尺八奏者は東京藝術大学時代の同世代奏者である寄田真見乃に加わってもらいました。

助成と認証プログラム

今回の公演は、港区の文化芸術サポート事業助成公演かつ東京オリンピックに向けて行政主体で行われている文化プログラム「beyond2020」の認証公演として開催させていただきました。それぞれの概要については下記の通りです。

令和元年度港区文化芸術活動サポート事業

港区文化芸術活動サポート事業とは、区内で行われる多彩な文化芸術活動及びそれらの活動を行う団体を育成するため、港区文化芸術振興基金を活用し、経費の一部に対し助成金を交付するとともに、専門家によるアドバイスにより支援するものです。(港区公式HPより)

beyond2020プログラムとは

2020年以降を見据え、日本の強みである地域性豊かで多様性に富んだ文化を活かし、成熟社会にふさわしい次世代に誇れるレガシーの創出に資する文化プログラムを「beyond2020プログラム」として認証し、ロゴマークを付与することで、オールジャパンで統一感を持って日本全国へ展開していきます。(beyond2020公式HPより)

二つの助成と認証をいただいたことで、東京オリンピック2020に向けて価値ある文化的な発信ができたことはもちろん、私たち団体や奏者もそういった内容で来年に迫る東京オリンピックをわずかでも盛り上げることができたことは非常に光栄なことでした。

会場〜銕仙会能楽研修所〜

今回のコンサートの会場は港区表参道にある銕仙会能楽研修所でした。

能楽堂でコンサートを開催する機会というのはなかなか経験できることでもないので、出演者一同当日はとても楽しみながら演奏させていただきました。

音響的な心配やセッティング(配置)の問題、舞台には足袋を着用して出ないとならないというような能楽堂ならではの要素も含めて非常に貴重な経験をさせていただきました。

その中でも特に印象的だったのは、舞台のどの場所で演奏するかで響きが大きく異なるという点。

舞台、会場全体が一つの音響装置となっている能楽堂ではちょっとした立ち位置で響きが大きく変化していくのが西洋のコンサートホールよりも顕著で特徴的でした。

チラシ

チラシのデザインはいつもお世話になっているデザイナーの山口崇多氏。当団体のロゴやパンフレットのデザインなど総合的にデザイン面でサポートしていただいています。今回のチラシデザインがこちら。

今回のコンサートのコンセプトを山口氏に伝えた結果、おもて面には「月」「能楽堂の松」「コンサートのステージ」を型どったシンプルながらインパクトのあるデザインに。画像だとわかりづらいですが、おもて裏ともに全体的に金色があしらわれたとても素敵なデザインになりました。

これだけでも記念になりそうなチラシデザインとなりました。

プログラム

今回のプログラムはこんな感じ。西洋と東洋の「対比」によって構成された一部、「交差」を試みる二部、「融合」を目指した三部という全三部構成の2時間公演となりました。

尺八と木管5重奏の対比

公演の最初は尺八と木管5重奏のそれぞれのオリジナル作品を演奏し、日本と西洋の「対比」をお送りしました。曲は、

古典本曲:古伝巣籠【尺八独奏】
野村正峰:胡笳の歌【尺八独奏】

と尺八の独奏による2曲をお届けした後、

J.イベール:木管5重奏のための3つの小品【木管5重奏】
C.ドビュッシー:小組曲【木管5重奏】

というフランス作曲家による木管5重奏作品を2曲演奏しました。

実は、イベールもドビュッシーも非常に日本にはゆかりのある作曲家で、イベールは皇族の2600周年を記念して日本政府から曲を委嘱されており、ドビュッシーは代表作『交響詩“海”』のスコアの表紙に葛飾北斎の富嶽三十六景の版画を用いるなど、まさに日本と西洋の交流を象徴した作曲家ということで今回取り上げました。

文化の交差

休憩を挟んた二部では、両楽器・文化の「交差」ということで敢えて違う国の曲を演奏してみるという趣旨の演奏をお届け。

J.S.バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013より第一楽章“アルマンド”【尺八+フルート】
サン=サーンス:白鳥【尺八+木管5重奏】
別宮貞雄:日本組曲第一番【木管5重奏】

をそれぞれお送りしました。バッハの『無伴奏パルティータ』では尺八とフルートを能楽堂の舞台と橋掛りに離してセッティングして演奏。サン=サーンスの『白鳥』は尺八がソロを、木管5重奏ではこちらもフランスに留学経験のある別宮貞雄の『日本組曲』をそれぞれ演奏しました。

この二部では敢えて違う楽器で演奏することで見えてくる“違和感”を感じてもらおうと曲を選びました。

例えば、相撲に外国人力士がいる、演歌を外国人が歌う、日本の曲を外国人歌手が歌っている…

という時になんとなく私たち日本人が感じる“違和感”。その違和感が逆にその文化独自の特徴を感じさせてくれる。そんな意図を持った挑戦的なプログラムになりました。

異文化の融合

コンサートの最後は、ここまで「対比」「交差」と繋いできたプログラムを「融合」させるプログラムとして一曲お届けしました。プログラム上のメインでもあったこの三部では、

江戸信吾:証城寺のスケルツォ【尺八+木管5重奏】

を演奏いたしました。この『証城寺のスケルツォ』はもともと尺八と琴・十七弦のために書かれた曲ですが、それを今回は若手作編曲家としてご活躍中の西下航平氏に編曲を依頼し尺八と木管5重奏に書き換えていただきました。

この曲はそのオリジナルの曲想に編曲の妙も加わって、二部で感じた「やっぱり和と洋は交わらないんだろうか。限界があるんだろうか…」という違和感を払拭してくれた演目となっており、今回の公演は全体を通して「再演したい!」という想いを強く抱く内容でしたが、それはこの『証城寺のスケルツォ』の完成度の高さがそう感じさせてくれたと言っても過言ではなかったと思います。

それほど、多くの方に聴いていただきたい素晴らしい作品でした。

出演

今回の公演の出演者はルヴァンのメンバーを中心としたこの6名。

【尺八】
・寄田真見乃(尺八/琴古流大師範)

【木管5重奏】
・石田彩子(フルート/第2回アジアフルートコンクール第1位)
・佐竹真登(オーボエ/日本フィルハーモニー交響楽団奏者)
・西澤いずみ(クラリネット/東京藝術大学大学院卒業)
・能瀬愛加(ホルン/東京藝術大学大学院卒業)
・大内秀介(ファゴット/日本フィルハーモニー交響楽団奏者)

現在は、それぞれがオーケストラや吹奏楽、アンサンブル奏者として活躍する若手演奏家で、東京藝術大学時代を同時期に過ごした6名です。

この6名での演奏は今回が初めてでしたが、リハーサルから非常に柔らかくいい雰囲気でその空気は演奏にも出ていたように思います。

テーマと文字

これまでの“ONE”CONCERT同様、今回のテーマも代表の藝大時代の同期で能楽師の小野里泰樹の奥様で書道師範の小野里栄里さんに書いていただきました。

ホールの関係者やお越しいただいたお客様からも「印象的な字ですね」というお言葉をいただきました。もともと漢字二文字として始めたこの「テーマの漢字」でしたが今回の異文化交流、日本と西洋を聴き比べるという公演内容にとても合っていたのではないでしょうか。

英語のプログラムとチラシ

今回の公演が異文化交流という趣旨もあり、チラシとプログラム、Webサイトも簡単ではありましたが英語版をご用意させていただきました。そのおかげもあってか、当日は数名ですが外国のお客様にも足を運んでいただくことができました。

英語版のチラシやプログラムの作成は団体としても初めての試みでしたがやってみれば意外とできるもので今後も続けていけたらと思います。日本のお客様はもちろん、アジアやヨーロッパなど海外のお客様にも足を運んでいただける団体になっていけたら嬉しいですね。

公演を終えて

今回は、港区から助成をいただいた公演ということで企画や内容、会場や出演者まで普段の自主公演とはまた違った角度からお届けすることができた公演となりました。

自分たちだけではなかなか開催できない今回のような公演を2019年という東京オリンピック2020の前年度に行うことができたのは、出演者をはじめ団体として本当に貴重な経験となりました。

私たちアンサンブル・ルヴァンのロゴは漢字の「風」とフランス語で風の意味であるle ventの頭文字「L」を型どったデザインになっています。これには「日本人である私たちが西洋音楽を発信している」という意味合いが含まれています。

日本人が西洋音楽を演奏していることは本場の西洋の人たちから見るともしかすると“違和感”があるかもしれません。しかし、日本人である私たちだからこその西洋音楽もきっとあるのだと感じます。

そういった意味でも、今回の公演は日本と西洋を対比・融合していく中で、聴いている方々だけでなく私たち自身もそれぞれの文化の新しい可能性を感じることのできる内容となり本当にいい経験をすることができました。

公演後、打ち上げの席でも「またぜひ再演したいね」という話題がしきりに話にあがっていました。それはきっと私たち自身がこの公演に何かしらの“手応え”を感じていたからだと思います。

まだまだそれぞれは20代後半と若手奏者ではありましたが、この若さでこういった公演内容でコンサートを開催できた経験を生かしてこれからもまた新しい活動に繋げていけたらと思っています。

最後になりましたが、今回の一連の公演に携わってくださった関係者のみなさまそして会場にお越しくださった全てのお客様にこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。

本当にありがとうございました。

再公演のお願い

本公演は出演者ならびに団体としても今後積極的に再演を行なっていきたいと思う公演です。公演内容や会場についてを依頼演奏のページにまとめさせていただきましたので興味のある方はぜひご覧ください。

東京オリンピック2020に向けての文化発信をはじめ海外の方を対象としたイベントなど多くの方々に本公演を届けていけたらと思っておりますのでご検討いただけたら幸いです。

(関連ページ→)“ONE”CONCERT〜FUEIRO〜|依頼演奏